また私が祈りをしたのも彼がそうさせたのであり、私は「汝はキリストそのものなり」といったのだ。私は恩寵を求めた。長い間起こって来たそれを求めた。そして奇蹟を求める気持ちを起こさせてくれるように求めた。そのことは私には相応しないことに思えた。それから私は祈り、ただ恩寵だけを求めた。それ以上はいわなかった。しかし後になると私は愛を懇願し、祈った。それはイエス・キリストのはからいであり私のものではなかった。こうしている間、何度も体中に震えが襲って来たのだった。この後明け方になって私は又眠った。そしてこんどはキリストは自分自身をどうやって人類に結びつけているのだろうということばかりを考えていた。聖なる考えがやって来た。しかしそれは探究の道のほかにあるものだった。私を通り過ぎて行ったそれをペンに伝えることは全く不可能だ。私にわかるのはそんな考えの中に私がいたということだけなのだから。
次に私は父親に出会った。父はいつもの服装とはまるでちがって真紅にちかい色の服装だった。父は私をそばに呼びよせると私の両腕をとった。父がとったのは腕のカフスと袖のひだの所だった。父は袖のひだを引き寄せるとひもでひだを結んでくれた。私の服の袖は私が僧侶でなく一般の人間であることを示していた。
私は讃美歌のこんな一節を選んだ。
イエスはわが友のうち最良の友
私は霊的な事物の中で今そんなことを知った。そしてそれはキリストの恵みというよりは、自らを卑下し、何も求めず、謙遜してものごとに対すればわかるものなのだった。私は愛を求めたが、それは出過ぎた高望みだった。なぜなら神の恵みを受けているなら、全てを彼の御心にまかせ、その御心が喜び給うふるまいをするだけが全てだからだ。神の恵みの中にいる彼が最上の幸福なのだから。私は慎ましやかな祈りによって許しを乞わざろを得なかった。まだ「試み」の中に置かれていてそうせねば良心の安らぎが得られなかったから。聖霊がこのことを教えてくれた。だが自らの愚かな知力に自信を持った私は謙遜を知らなかった。それが全てのものなのに・・・・・・。
巨大霊能者の秘密 : スウェデンボルグの夢日記
E.スウェデンボルグ 著 ; 今村光一訳・解説
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